何だソレ

フロアに戻れば既に莉英と増田は戻って来ていた。
莉英は俺と目が合うとニコっと笑って駆け寄って来た。
戦闘モードだ。

 

「東雲さん、宮部さん、金曜日予定ありますか?」
「は?」

 

思わず不機嫌な声が出る。
金曜日は俺がお前の事誘っただろ。

 

「充、そんな敵対視しなくても、少しは話聞こうよ」

 

志槻の言葉に莉英は苦笑する。
俺の不機嫌の理由を理解しての苦笑だろう。

 

「事業部長から、金曜日に東雲さんの歓迎会やろうと思っているから皆さんの予定を確認するようにと言われまして・・・」

 

不可抗力だって言い訳か?
良い度胸だな。

 

「僕は無いけど・・・充は?」
「さっきまであったけど、無くなった」

 

俺の言葉に志槻が「え?」って顔をする。

 

「俺の歓迎会に俺が行かない訳にいかねーだろ」
「・・・だよね」

 

だよね、じゃねーよ。
志槻の奴笑いやがって。

 

「東雲さん、苦手な食べ物とかありますか?」
「無い」
「分かりました」

 

莉英は頷き、また新たにフロアに戻って来た同僚に金曜日の予定を尋ねている。

 

「そんなに警戒しなくても、葉月さんは充の事自分から誘ったりしないと思うけど」

 

うるせーよ。

 

「鉄壁の葉月さんだから」

 

クスクスと志槻は笑って自席へと戻って行った。
鉄壁の葉月さん?
何だソレ。

 

side-莉英

 

金曜日まで、あっという間だった。
東雲部長は私が歓迎会の話をしてから今日までずっと不機嫌な態度で威圧的。
そんなんで私が怯むと思ったら大間違いなんだから。
それに今回の事は不可抗力だ。
元々「あけておく」って返事もしてない訳だし。

 

定時のチャイムが鳴り、幹事の為早めに出ようとしたら東雲部長に名前を呼ばれた。

 

「葉月」

 

相変わらず不機嫌な声で。

 

「はい」

 

笑顔で答えれば、手にはスマホ。
恐らく個人所有の。

 

「・・・はい?」
「察しろ。頭悪ぃな。一件急用で客に連絡しなきゃならなくなった。歓迎会に遅れるからお前の連絡先教えろ」

 

カチン、と来るけどここは我慢。
笑顔笑顔。
って無理!
腹が立つから言い返さなきゃ気が済まない。

 

「宮部さんに連絡すれば良いじゃないですか」
「幹事だろ」
「ですけど」

 

ですけど、じゃねーよ。
とでも言いたそうな顔したまま東雲部長が黙る。

 

「宮部に連絡する」

 

勝った!
思わずグッと拳を握る。

 

「後で覚えとけよ」

 

ゾッとする程の低音で東雲部長が私にだけ聞こえる声でそう言った。

 

「ね?鉄壁の葉月さんでしょ?」

 

私が扉に向かう時、宮部さんのそんな声が聞こえた。
鉄壁の葉月さん??
なに?それ??