絶対俺の女にする

ガチャガチャと隣のテーブルにお盆が置かれた。
2人の男が俺たちの横のテーブルに腰掛けた。

 

「なぁ、聞いた?葉月と畑中と須藤の話」

 

2人の会話のネタに思わず耳が反応する。
噂回るの早いな。
今朝の出来事なのに。
こいつら莉英の同期か?

 

「聞いた聞いた。畑中もバカだよな。絶対葉月のが良い女なのに」

 

同感。
心の中で相槌を打つ。

 

「ああ。つーかアイツ2回目じゃん。須藤に男盗られんの。それ分かってて付き合ったクセに須藤に乗り換えるとか下衆過ぎんだろ」

 

は?
何その新情報。

 

「もうアッタマ来る!!」

 

ガチャンガチャンと、男の前に2人の女が着席する。

 

「聞いた?莉英とバカ中の事」
「ああ、俺らも今その話してたとこ」

 

ヒソヒソと声を潜めてるつもりだろうが丸聞こえだ。
4人がチラと俺を見て声を詰まらせた。

 

「誰?あのイケメン」
「初めて見る」

 

ヒソヒソ。
だから、全部丸聞こえだ。

 

「フロア戻る?」

 

志槻の提案に気にするなと告げる。
フロアに戻っても好奇の目に晒される事は変わりない。

 

 

4人は暫く俺を見てコソコソやっていたが、思い出したように話題は莉英の話へと戻る。

 

「けどさぁ、2回も男盗られるって事は葉月にもやっぱ問題あるんじゃね?」
「はぁ?!悪いのはどう考えても畑中でしょ!飲み会の時だって翔子があからさまに莉英と畑中の間に割り込んで来たり、わざとらしく身体くっつけたりしてたのあんたたちだって見てたでしょ?!」
「そ、そりゃそうだけど」
「それをキッパリ断らないでデレデレしちゃってさ!莉英は気にしないって言ってたけど、気にしない訳無いじゃん」
「いや、でも男としてはそこで妬いて欲しいっつーか・・・物分り良すぎるのも」
「じゃーあんたたち、私たちの同期飲みで莉英と翔子の畑中の取り合いなんか見たかった訳?莉英は私たちの為に空気読んだんでしょうが!2人きりの時に翔子に近付かないでってあのバカに散々言ったって莉英言ってたんだから!」
「わ、分かったって、お前声でかいって!」

 

気付けば怒鳴るように意見を述べていた女に周りが注目していて、女はハッとしたように口を抑えた。
男Aと女Aの言い合いは終わったらしい。

 

「畑中と別れたんならチャンスだよな。俺須藤に興味無ぇし」

 

男Bの言葉に思わず舌打ちしそうになって慌てて口を噤んだ。

 

「いやアンタじゃ無理でしょ。畑中の時だって莉英散々断ってたし。それにもう社内恋愛する気無いんじゃない?翔子がいる限り」
「あー・・・かなぁ?」

 

男Bと女Bの話にふと考える。
莉英は俺とも恋愛しない気だろうか?

 

 

 

・・・無理。
させる。
絶対俺の女にする。

 

そう決意した所で志槻が腕時計を指差した。
そろそろ昼休憩終わりか。