超カワイイ

無理矢理引き寄せれば、ふわりと香るローズの香り。
重ねた唇は想像通りの柔らかさ。
驚き固まる葉月サンから1度唇を離し再び顔を近付ければ、そっと瞳が閉じられた。
受け入れた。
思わず口の端が上がる。

 

「っ・・・ハっ・・・」

 

葉月サンから漏れる妖艶な吐息に、身体中がゾクゾクと痺れた。
ヤベ。
想像以上に良い女。

 

まさか32にもなって本気で欲しいと思える女に出逢えるとは思ってもいなかった。

 

口説き文句で一発。

 

そう思って囁いた言葉は、まさかの不発。
セクハラ、と真っ赤な顔して逃げ出す葉月サン。

 

誰もが呼ぶ「葉月」って苗字じゃなくて、元彼だった男が呼んでた「莉英」でもなくて、
俺から逃げ出したその背中をどうにか引き止めたくて、出た言葉は「りぃ」だった。

 

ビックリして振り向いた莉英の顔のどこにも余裕なんて見当たらなくて、満足した。

 

金曜の夜あけとけ、と告げた俺に莉英は更に真っ赤になって再び逃げ出した。

 

 

ヤベェ・・・
超可愛い。

 

昼休憩になると、莉英は増田と共にサブバックに財布とスマホを突っ込んでフロアから出て行った。

 

「充、久しぶり」

 

会議室から出て来た俺に自席から手を挙げたのは同期で同じ第一営業部に所属している宮部志槻(みやべ しづき)。
入社当初から馬が合い、仲良くしている。
俺とは違ったタイプのクールガイだがシスコンだ。
何かあれば直ぐに「志穂が、志穂が」だ。
こんなだから女が出来ても直ぐに別れている。

 

「社食でしょ?」

 

志槻の言葉に頷き社食へ向かう。

 

食堂に入れば「キャー」と黄色い声が聞こえてウンザリする。

 

「充のそういうとこ変わって無いね」

 

あからさまに「ウゼェ」って顔をしたことへの言葉だろう。

 

外食すると寄ってくる女がウザくて、俺は社食を選んでいる。
社食なら寄って来た女を睨みつければ一発撃退だ。

 

日替わりA定食を選んで、適当な位置に腰を降ろした。

 

「志槻は?」
「変わった事?」

 

無言で頷けば深い溜息。

 

「志穂が結婚した」
「例の?」
「そ、幼馴染の」
「ふーん」

 

つーかそれ、お前の変化じゃねぇだろ。
お前の姉の変化だろ。

 

「2年前」

 

志槻の姉の話はどうでも良かったが、止める理由も特に無いからそのまま聞いている。

 

「遅かれ早かれ結婚するとは思ってたけどね。相思相愛だったし。意味不明に拗れてるからさっさとくっつけって思ってたし」

 

ウソつけ。
志穂が一生独身でいれば良いのにとボヤいていたのを俺は覚えている。

 

「ガキは?」

 

志槻は首を横に振る。

 

「まだ。結婚後暫くは2人の時間を満喫したいからって・・・けど志穂ももう32だし、そろそろかもね。あー憂鬱」
「くっつけって思ってたんじゃねーのかよ」
「・・・」

 

志槻はアンニュイな顔をしたまま黙り込んでしまった。
こいつのシスコンは健在だったか。